本書について
激務がたたり脳溢血で突然死したデパートの中年課長が、
たった7日間の期限つきで現世に舞い戻ってくる。
ただしみずからの正体を明かすことは許されず、
39歳の独身美女の姿を借りているため、行く先々で珍騒動が巻き起こる。
家族に、仕事に、やり残したことをやり遂げ、主人公は無事成仏できるのか。
行動をともにするやくざの組長と小学生のストーリーをからめつつ描かれる、
ハートウォーミングな「死者の自分探し」の物語である。
もともと新聞連載小説だけに、随所に泣き笑いのつぼが設定されており、
著者独特の歯切れのいい文体ともあいまってたちまち引き込まれる。
脇役の一人ひとりまで丁寧にキャラクター設定された
「優しい人」「いい人」たちによるファンタジーは、まさに浅田節の真骨頂だ。
おまけに中年の純情恋愛までが織り込まれ、山あり谷ありで読者を飽きさせない。
やや意外なラストシーンはほろ苦くも温かい味わいを残す。
美しい女性の肢体をわがものにした主人公の行動のおかしみ
、間抜けな死に方をしたやくざのべらんめえ口調の説教節など、
著者ならではのディテール描写、懐かしくも美しい日本語の世界などは、
本筋をはなれても楽しめる。
死をめぐり、家族間、世代間で感想を述べ合うきっかけとしても
好適のエンターテイメントといえよう。
– 松田尚之(彫刻家)
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五年前に買って、この歳になって改めて読んだ。
何回読んでも目頭が熱くなる。久しぶりに声をあげて号泣してしまった。
そして読む人を飽きさせない設定と展開。
死者の世界を描きながら、このこみ上げて来るワクワク感は、
浅田次郎の作品ならでは。
また本書の内容を忘れた頃にふと読み返し、
わくわくしながら、でも気付けは号泣してる私がいることは間違いない。
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